2040年問題と終活|「多死社会」のデータから考える、今からできる備え
数年前に親を見送ったとき、葬儀社の方がこんなことを言っていました。
「これからもっと増えますよ、ご葬儀は」
当時はそこまで深く考えませんでした。でもあとから調べてみると、日本はこれから「多死社会」と呼ばれる時代に本格的に入っていくということがわかりました。
この記事では、公的なデータをもとに「2040年問題」と終活の関係を整理しています。不安を煽りたいわけではありません。ただ、知っておくだけで備え方が変わることもあると思っています。
2040年問題とは何か
「2040年問題」とは、団塊の世代が90歳代に差しかかり、日本の年間死亡数がピークを迎えるとされる問題です。
国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」によると、2040年前後に年間死亡数は約167万人に達すると推計されています。
現在の数字と比べてみます。
| 年 | 年間死亡数 |
|---|---|
| 2024年 | 約160.5万人(過去最多) |
| 2040年(推計) | 約167万人(ピーク) |
厚生労働省の「令和6年人口動態統計」によると、2024年の年間死亡数はすでに160万5,378人で過去最多を記録しました。ここからさらに増えていくということです。
出生数は68万6,173人。つまり、亡くなる方が生まれる方の2倍以上になっている。これが今の日本の現実です。
高齢化率の推移
「高齢化率」とは、総人口に占める65歳以上の割合のことです。
内閣府「令和7年版高齢社会白書」と国立社会保障・人口問題研究所の推計をもとにまとめると、以下のように推移していきます。
| 年 | 高齢化率 |
|---|---|
| 2024年 | 29.3% |
| 2040年(推計) | 34.8% |
| 2060年(推計) | 約40% |
2040年には、約3人に1人が65歳以上になります。2060年には約2.5人に1人です。
この数字が意味するのは、「支える側」の人口がどんどん減っていくということ。医療も、介護も、そして葬儀やお墓に関わる業界も、人手が足りなくなっていきます。
多死社会がもたらす具体的な影響
数字だけだと実感がわきにくいかもしれません。でも、すでに現場では影響が出始めています。
火葬場の逼迫
東京都など都市部では、亡くなってから火葬まで5日〜7日待ちが珍しくなくなっています。日本経済新聞の報道では、2040年ごろには「火葬待ち2週間」が当たり前になる可能性も指摘されています。
火葬までの間、ご遺体を安置する施設の確保も課題になります。自宅での安置が難しい場合、安置施設の費用が日数分かさむことになります。
葬儀費用への影響
需要が増えれば、費用にも影響が出ます。現在、葬儀費用の全国平均は約118.5万円(鎌倉新書「第6回 お葬式に関する全国調査」)ですが、人手不足や施設の需給バランスの変化によって、今後上昇する可能性があります。
葬儀費用について詳しくは、以下の記事でデータをまとめています。
墓地・お墓の問題
厚生労働省の統計によると、改葬(いわゆる墓じまい)の件数は2023年度に全国で約16.7万件に達しました。20年前の約3.8万件と比べると、4倍以上に増えています。
背景には、核家族化や都市部への人口集中で「お墓を継ぐ人がいない」という問題があります。永代供養や樹木葬など、跡継ぎ不要の供養を選ぶ人が増えているのもこの流れです。
墓じまいの最新データについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
相続放棄の急増
多死社会の影響は、お墓だけでなく相続にも及んでいます。最高裁判所の司法統計によると、相続放棄の受理件数は2024年に年間30万件を初めて突破しました。亡くなった方のうち約5.5人に1人が放棄される時代になっています。
「負動産」と呼ばれる売れない実家、おひとりさまの増加、2024年の相続登記義務化などが背景にあります。詳しくは相続放棄は年間30万件超|「残す側」が知っておきたい数字と備えで整理しています。
終活の現状 — 「知っている」けれど「やっていない」
多死社会が近づくなか、終活への関心は高まっています。でも、実際に行動に移している人はまだ少ないのが現状です。
NPO法人ら・し・さの「第2回終活意識全国調査」(2024年調査・2025年公開)によると、エンディングノートに関するデータは以下のとおりです。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| エンディングノートの認知度 | 84.3% |
| 実際に持っている人 | 13.3% |
知っている人は8割以上なのに、持っている人は1割強。さらに、持っている人の中で家族に共有しているのは約2割にとどまります。
「いつかやろう」と思いながら、なかなか手をつけられない。自分もそうだったので、この数字にはとても納得してしまいました。
今からできる3つのこと
大がかりなことをする必要はないと思います。自分が親を見送った経験から、「これだけでもやっておけばよかった」と感じたことを3つ挙げます。
1. 葬儀社の目星をつけておく
いざというとき、一から探す余裕はほとんどありません。自分の場合も、病院から「葬儀社はお決まりですか?」と聞かれて焦った記憶があります。
事前に2〜3社の見積もりを取っておくだけで、気持ちの余裕がまったく違います。
2. エンディングノートに「最低限」だけ書く
全部埋める必要はありません。自分が最初に書いたのは、連絡先リスト(親族・友人・保険会社)だけでした。
それだけでも、残された側が「まず誰に連絡すればいいか」で迷わなくなります。完璧を目指さず、1ページだけ書いてみる。それで十分です。
3. 家族と「お墓のこと」を一度だけ話す
改葬が急増しているデータからもわかるように、「このお墓をどうするか」は多くの家庭で先送りにされている課題です。
重い話題ですが、一度だけでいいので「うちのお墓、このままでいいのかな」と話してみる。それだけでも、いざというときの方向性が見えやすくなります。
まとめ
2040年に向けて、日本は年間167万人が亡くなる「多死社会」のピークを迎えます。火葬場の逼迫、葬儀費用の問題、お墓の継承問題。どれも、自分や家族にいつか必ず関わってくることです。
でも、今すぐ全部を解決する必要はありません。
まずは「知ること」が第一歩だと思います。データを知っておくだけで、漠然とした不安が「具体的な備え」に変わります。この記事がそのきっかけになれば嬉しいです。
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ソラ
数年前に親を家族葬で見送りました。葬儀・お墓・終活について、経験者の目線でわかりやすく情報を届けています。
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