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終活費用を狙う「不動産押し買い」被害が急増中|高齢者を守るためのチェックリスト

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終活費用を狙う「不動産押し買い」被害が急増中|高齢者を守るためのチェックリスト

終活の準備を始めた高齢者が、知らない業者に自宅を半値以下で買い叩かれる——そんな相談が2026年に入って急増しています。

アットプレス(2026/04/07)によると、不動産鑑定士と弁護士が合同で対策相談会を4月25日に開くほど、事態は深刻です。狙われているのは、施設入居費や葬儀費用のまとまったお金が必要になったタイミングの高齢者。

自分の親を見送ったあとに感じたことですが、終活のお金の話は、家族ですら切り出しにくい。その「誰にも相談できない隙間」に、押し買い業者は入り込んできます。

この記事では、被害の手口・典型ケース・被害を防ぐチェックリスト・相談先を整理しました。親の家のことを気にしている方に、先に知っておいてほしい内容です。


「不動産押し買い」とは何か

「押し買い」とは、業者が自宅や店舗を訪問して、売るつもりのない不動産を強引に買い取ろうとする行為です。

もともと「押し買い」は貴金属・着物・ブランド品などの動産で問題になってきた手口ですが、近年は不動産にも同じ構図が持ち込まれていると報じられています。

動産の押し買いとの違い

項目動産の押し買い不動産の押し買い
対象着物・貴金属・古銭など戸建て・マンション・空き家
きっかけ「査定だけ」と言って訪問「近所で探している」と訪問
金額数千円〜数十万円数百万〜数千万円
規制特定商取引法の訪問購入規制あり宅地建物取引業法の適用範囲が狭い

不動産は動産と違い、訪問購入規制が直接適用されにくいため、被害額が跳ね上がります。数百万円単位で相場より安く買い叩かれるケースも珍しくありません。


なぜ「終活世代」が狙われるのか

狙われる理由は3つあります。

1つ目は情報格差。不動産の相場感を調べるのが難しい世代で、インターネットで一括査定を取る発想がない方も多いです。

2つ目は孤立。一人暮らしの高齢者は、家族や知人に相談する前に業者と接触してしまう。訪問販売はこの「相談前」のタイミングを狙ってきます。

3つ目はまとまった現金の必要性です。施設入居の一時金、医療費、葬儀費用の準備など、終活を意識し始めた時期は急にお金が必要になる場面が増えます。「今月中に現金化したい」という焦りは、業者にとって最も付け込みやすい心理状態です。

「施設に入るから」と言わせる話術

実際の相談事例では、業者が雑談のなかで「これからどうされるんですか?」と質問し、「施設に入ろうと思って」と引き出した時点で押しの強さが変わる、というパターンが報告されています。

終活の情報は、親族以外にはできるだけ出さないほうがいいと、自分は親の件を経験してから強く思うようになりました。


押し買い被害の典型ケース

ケース1:査定のはずが即契約

「近所で家を探している買い手がいる」と言って訪問。査定のつもりで家に入れたところ、その場で契約書を出され、「今日中ならこの金額」と迫られる。高齢者が動揺している間に署名させ、数日後に所有権移転まで進んでしまう。

ケース2:相場の半値以下で買い取り

周辺相場3,000万円の戸建てを、1,200〜1,500万円で買い取る契約を成立させた事例が報じられています。後日家族が気づいて争っても、本人の署名がある契約を覆すのは簡単ではありません。

ケース3:施設入居費の前払いを盾にする

「施設の入居金が足りないなら、今すぐ買い取る」と提案。本人の不安に乗じて、相見積もりを取る時間的余裕を与えない。契約後に「もう売っちゃった」と家族に事後報告される形です。


被害に遭わないためのチェックリスト

親や自分自身を守るために、以下を家族で共有しておくことをおすすめします。

  • 訪問してきた業者とは玄関先で話す。家に入れない
  • 「今日だけ」「今月だけ」の期限は全て警戒する
  • 査定は必ず2社以上に依頼する
  • 契約書を出されたら「家族に相談する」と言って即答しない
  • 相場は国土交通省「不動産情報ライブラリ」で自分でも確認する
  • 不動産一括査定サイトで、オンラインで複数社の目安を取っておく
  • 「施設に入る予定」「終活中」と他人に話さない

国土交通省の不動産情報ライブラリ(旧・土地総合情報システム)では、実際の取引価格を地域別に検索できます。親の家の周辺相場を平時のうちに家族で確認しておくと、いざというときの判断が早くなります。


万が一、契約してしまったら

契約してしまった場合でも、諦める必要はありません。

8日以内ならクーリングオフの可能性

訪問販売による不動産売買契約は、宅地建物取引業法37条の2に基づき、業者の事務所以外で契約した場合は8日以内に書面で解除できる可能性があります(買主が宅建業者の場合)。

ただし、個人間売買として偽装されているケースではクーリングオフの対象外になることもあります。業者の実態を確認するのが最優先です。

すぐに相談すべき3つの窓口

  1. 消費生活センター(188):最初の相談はここが確実。全国共通の電話番号
  2. 弁護士会の法律相談:各都道府県弁護士会が初回無料相談を用意している地域が多い
  3. 不動産鑑定士:適正価格を第三者の立場で算出してもらう

1日でも早く動くことが、取り返しのつく範囲を広げます。


4月25日に対策相談会が開催

今回の被害急増を受けて、不動産鑑定士と弁護士が合同で対策相談会を4月25日に開催すると発表されています。主催はライズ・ステージ株式会社。詳細はアットプレスの発表記事を確認してください。

相談会のような場がニュースになること自体、被害が一過性ではなく全国的に広がっていることの裏返しだと感じます。


終活を「隙間」にしないために

終活は本来、家族に迷惑をかけないための準備です。その準備が、誰にも相談できない孤立のなかで進むと、今回のような被害が生まれます。

大切なのは、お金の話を家族の誰か一人とだけでも共有しておくこと。親の家の相場、不動産を売る予定があるのか、いつごろ施設を考えているのか。全部を一気に決める必要はありません。

終活の始め方は、不動産や相続より先に整理すべきことがいくつかあります。その手順については、以下の記事にまとめました。

「押し買い」は、準備していない家庭ほど狙われやすい犯罪です。親と一度、家のことを話す時間を作ってみてください。


参考資料

ソラ

ソラ

数年前に親を家族葬で見送りました。葬儀・お墓・終活について、経験者の目線でわかりやすく情報を届けています。

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