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親の葬儀費用200万円を銀行で下ろせない?|口座凍結中でも使える「仮払い制度」の仕組み

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親の葬儀費用200万円を銀行で下ろせない?|口座凍結中でも使える「仮払い制度」の仕組み
この記事のポイント
  • 親の死亡で口座は凍結されるが、2019年施行の仮払い制度で遺産分割前でも1金融機関あたり上限150万円まで引き出せる
  • 計算式は「預貯金額×1/3×法定相続分」で上限150万円。複数銀行に口座があればそれぞれで仮払い可能
  • 書類の取り寄せから現金化まで1〜2週間かかるため、葬儀費用の支払い期限にギリギリ間に合わないケースもある
  • 相続放棄を検討中なら仮払いは使わない。引き出すと法定単純承認とみなされ放棄できなくなる可能性がある
  • そもそもの葬儀費用の目安を把握しておくと慌てない。よりそうお葬式なら全国対応の明朗価格プランを無料資料請求できる

先日、SNSで「父の葬儀費用200万円のために銀行へ行ったら口座が凍結されていた。自腹で立て替えたあとで『150万円まで引き出せる制度がある』と知った」という投稿が話題になりました。

自分は家族葬で親を見送り、費用は10万円前後で済みました。正直に書くと、この仮払い制度を知らないまま当時を乗り切っていたと思います。もしあのとき一般葬を選んで150万円や200万円を請求されていたら、まったく同じように困っていたはずです。

この記事では、親の口座が凍結されてから葬儀費用を工面するときに使える預貯金の仮払い制度について、仕組み・計算式・手続きの流れ・間に合わないときの代替策まで整理しました。

なぜ故人の口座から葬儀費用を下ろせないのか

親が亡くなった瞬間から、故人の預貯金は相続財産になります。相続財産は法定相続人全員の共有財産となり、原則として遺産分割が終わるまで相続人の一人だけで勝手に引き出すことはできません。

銀行が死亡を知るタイミング

銀行は役所と直接連動しているわけではありません。死亡届を役所に提出しただけでは口座は凍結されません。口座が凍結されるのは、主に次のようなタイミングです。

  • 遺族が銀行に死亡の連絡をしたとき
  • 銀行員が訃報を知ったとき(新聞のお悔やみ欄、取引先からの情報など)
  • 相続人が残高証明を請求したとき

つまり、遺族が連絡するまでは口座は動かせる状態であることが多いのが実情です。ただ、連絡する前に引き出したとしても、後で相続トラブルの火種になります。

「連絡する前にこっそり下ろせばいい」はNG

「凍結される前に下ろしておこう」と考える方もいますが、これは勧められません。

  • 他の相続人から「使途不明金」と疑われやすい
  • 領収書や明細が残らないと葬儀費用として認めてもらえない
  • 後日の遺産分割協議で揉める原因になる

仮払い制度を使えば合法的かつ明細の残る形で引き出せます。手間はかかりますが、こちらを使うのが結局いちばん安全です。

預貯金の仮払い制度とは?

預貯金の仮払い制度は、2019年7月1日に施行された改正民法によって新設された仕組みです。

制度ができた背景

親が亡くなった直後は、遺産分割協議どころではありません。葬儀費用、病院への未払金、当面の生活費など、すぐに現金が必要になる場面が連続します。

改正前はこうした費用を相続人が自腹で立て替え、あとで遺産分割で精算するしかありませんでした。現金に余裕がない家庭では、借金やカードローンに頼らざるを得ないケースもあり、問題になっていました。

仮払い制度は「遺産分割が終わる前でも一定額までは相続人単独で引き出せる」ようにすることで、こうした負担を軽くするために作られた制度です。

いくらまで引き出せる?計算式と上限

仮払い制度で引き出せる金額には、次の計算式が定められています。

引き出せる金額 = 相続開始時の預貯金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分(1金融機関あたり上限150万円)

具体例で見る

たとえば、親が1つの銀行に1,200万円を預けていて、相続人が配偶者・子2人のケース。

相続人法定相続分計算引き出せる額
配偶者1/21,200万円×1/3×1/2=200万円150万円(上限適用)
子A1/41,200万円×1/3×1/4=100万円100万円
子B1/41,200万円×1/3×1/4=100万円100万円

配偶者は計算上200万円になりますが、上限150万円に制限されます。子Aと子Bは計算結果がそのまま引き出し可能額です。

上限は「金融機関ごと」

上限150万円は金融機関1行あたりの上限です。親が複数の銀行に預貯金を持っていれば、それぞれの銀行で別々に仮払いを受けられます。

ただし、必要以上に分割して請求すると他の相続人とのトラブルに発展しやすいので、実際に支払いが発生する金額の範囲で使うのが無難です。

仮払い制度の使い方:銀行窓口での流れ

必要書類

銀行ごとに細かく異なりますが、基本はこの3点です。

  1. 被相続人(故人)の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 仮払いを請求する相続人の印鑑証明書

「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍」は、本籍地を移していた場合に複数の役所から取り寄せる必要があります。平日しか発行してくれない自治体が多いので、葬儀の合間に役所を回ることになると思っておいたほうが心が楽です。

所要日数

書類がそろってから銀行に請求し、実際に現金化できるまでおおよそ1〜2週間かかるのが一般的です。「明日葬儀費用を払わなければいけない」という場面には、正直なところ間に合いません。

葬儀費用の支払いは、葬儀後1週間から10日以内を指定する葬儀社が多いので、この制度だけで乗り切るのはギリギリのラインだと考えておいたほうが安全です。

相続放棄を考えているなら使わない

仮払い制度で預貯金を引き出すと、法定単純承認とみなされて相続放棄ができなくなる可能性があります。

親に借金がある可能性がある家庭では、仮払いを使う前に必ず弁護士・司法書士に相談してください。相続放棄の判断期限は3ヶ月と短く、一度引き出してしまってから「やっぱり放棄したい」と言っても間に合わないことがあります。相続放棄の全体像は相続放棄は年間30万件超|「残す側」が知っておきたい数字と終活でできる備えにもまとめています。

150万円で足りない場合の選択肢

葬儀費用が150万円を超えるケース(一般葬や規模の大きい家族葬など)では、仮払いだけでは足りません。選択肢は3つあります。

1. 家庭裁判所の仮分割の仮処分

民法改正では、家庭裁判所の審判を経ることで150万円を超える金額の仮払いも認められています。ただし審判には時間と費用がかかり、葬儀費用の支払いに間に合わせるのは現実的ではありません。

どちらかというと、病院への多額の未払金や、相続税の一次立替えなど、葬儀後の場面で使われることが多い制度です。

2. 葬儀ローン

葬儀社・銀行・クレジットカード会社が提供する専用ローンです。即日〜数日で借入でき、あとから遺産分割で清算する前提で一時的に使う方もいます。ただし金利は年5〜15%と幅があり、借入額が大きいほど負担も増えるので、あくまで「短期のつなぎ」と割り切るのが前提です。

3. 故人の生命保険金

生命保険金は受取人固有の財産で相続財産に含まれないため、口座凍結の影響を受けません。請求から入金まで1〜2週間が一般的です。親が生命保険に入っているかどうか、受取人は誰なのか、保険証券はどこにあるのかを事前に把握しておくと、いざというときに一気に楽になります。

自分の場合:家族葬10万円で「助かった」話

正直に書くと、自分の場合は家族葬で10万円前後だったので、仮払い制度を使うほどの事態にはなりませんでした。

でも、もし一般葬を選んでいたら150万円前後はかかっていたはずです。当時の自分は仮払い制度の存在を知らず、親の口座がいつ凍結されるかも気にしていませんでした。もし「葬儀後10日以内に200万円を現金で用意してください」と言われていたら、自分の貯金では完全に足りなかったと思います。

葬儀費用の相場については葬儀費用の相場はいくら?家族葬で親を見送った自分が伝えたいことにまとめていますが、家族葬でも「宗教者を呼ばない」「飲食を最小限にする」といった節約をしない限り、30〜100万円が相場です。「うちはそこまで大きな葬儀にしない」と思っていても、普通に葬儀を行えば150万円に届いてしまうケースは珍しくないということです。

事前にできる3つの備え

仮払い制度を「使わずに済む」ように、親が元気なうちにできる備えが3つあります。

1. 葬儀費用の見積もりを先に取っておく

「喪主をやるのは初めて」という方がほとんどです。事前に資料請求するだけで、形式ごとの相場や、どの葬儀社が明朗会計かが見えてきます。相場感を持っているかどうかで、いざというときの判断の速さがまったく違います。

全国約4,000箇所の斎場と提携しているよりそうのお葬式は、8.91万円からの明朗価格で資料請求できます。NHKでも紹介された全国対応サービスで、親族が急に倒れたときの比較検討の材料になります。

資料を手元に置いておくだけで、「いざというときに150万円の現金が必要になるのかどうか」が事前にわかります。

2. 親の預貯金がどこにあるかを把握しておく

仮払い制度は金融機関ごとに150万円が上限です。親が複数の銀行に分散して預貯金を持っていれば、それぞれで別々に仮払いを受けられます。「どの銀行を使っているか」だけでも聞いておくと、いざというときに遺族が動きやすくなります。

3. 生命保険の受取人と証券の場所を確認する

生命保険金は相続財産に含まれず、口座凍結の影響を受けません。親が生命保険に入っているか、受取人が誰になっているか、保険証券はどこにあるかをエンディングノートに書き残してもらうだけで、遺族の選択肢が一気に広がります。書き方はエンディングノートの書き方にまとめています。

まとめ

  • 親が亡くなると預貯金は相続財産になり、銀行に死亡を知らせた時点で口座が凍結される
  • 2019年施行の預貯金の仮払い制度を使えば、遺産分割前でも1金融機関あたり上限150万円まで引き出せる
  • 計算式は「預貯金額 × 1/3 × 法定相続分」、上限150万円
  • 書類の取り寄せから現金化まで1〜2週間かかるため、葬儀費用の支払い期限によっては間に合わないこともある
  • 相続放棄を考えている家庭は、仮払いを使う前に必ず専門家に相談する
  • 150万円で足りないときは、家裁の仮分割処分・葬儀ローン・生命保険金などの選択肢がある

親が亡くなった直後は、頭の中がまっしろになります。「最終的になんとかなる」という制度を知っているだけで、当日の判断の質がまったく変わります。

葬儀そのものの費用を抑えたい方は、事前に複数社から資料を取り寄せて相場をつかんでおくのが一番の近道です。よりそうのお葬式は無料で資料請求ができるので、まずは手元に1冊置いておくだけでも備えになります。

ソラ

ソラ

数年前に親を家族葬で見送りました。葬儀・お墓・終活について、経験者の目線でわかりやすく情報を届けています。

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